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執筆者の写真Kudo

労災保険の休業(補償)給付:その受給要件や受給額について

労災保険の療養(補償)給付では、労災によるケガや病気が治ゆするまで必要な治療費等の給付が受けられます。ケガや病気の程度によっては、会社を休まざるを得ないときもありますよね?入院など、欠勤する日が多くなるとその分給与がもらえないかもしれません。そのような時には休業(補償)給付が役立つかもしれません。


この記事では、労災保険の給付内容のうち、休業(補償)給付について掘り下げて解説します。仕事中のケガや病気は誰にでもつきものです。あらかじめ確認いただき、お役に立てれば幸いです。

労災保険の休業(補償)給付

Guide Line

 

1. 労災保険の休業(補償)給付の要件


労働者が、労災を原因としたケガや病気による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、労災保険から休業(補償)給付が支給されます。

入院等でしばらく出勤できず、会社から給与が出ない場合に補償してくれるものとして手厚いといえますが、下記の受給要件をすべて満たす必要があります。


要件①:業務上または通勤上のケガや病気による療養であること(労災であること)
要件②:その療養のために労働することができないこと
要件③:賃金を受けていないこと

労災保険による給付のため、要件①は当然のことといえます。

要件②については、休業の必要がなければ療養(補償)給付の範囲といえます。

要件③については、会社が給与保障してくれるのであれば、わざわざ休業(補償)給付を受ける必要がないといえます。


労災による治療のため休業せざるを得ない場合、一般的に、上の3要件は満たす場合が多いと思います。要件③については企業の方針もあると思うので、確認してみましょう。


ここで重要な注意があります。以上の3要件を満たす場合、休業(補償)給付の対象となりえますが、給付は、休業の第4日目から支払われます。つまり、労災保険では、休業した最初の3日分の保険給付はありません

休業初日から3日間の期間のことを待期期間といいますが、この間は、労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を事業主に対して行うこととなります。

 

2. いくら支払われるの?


① 休業にかかわる給付内容

休業(補償)給付でいくら支払われるかについてですが、給付内容として下記の2種類がそれぞれ保険給付されます。

   

・休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)× 休業日数   

・休業特別支援金 =(給付基礎日額の20%)× 休業日数   


休業特別支援金の受給要件は、休業(補償)給付と同一で同一手続で受給できるため、両方合計して(給付基礎日額の80%)× 休業日数が保険給付されます。そのため、給付基礎日額がわかれば計算できることになります。


② 給付基礎日額の計算方法

給付基礎日額は、原則、労働基準法でいうところの平均賃金に相当する額です。

計算方法をざっくりとまとめると、下記のように計算できます。


労災発生日の直前3か月分の給与総額を合計する(=3か月合計

※ボーナスや臨時支払い賃金を除く

→ 3か月合計を、その期間の暦日数で割る(=1日あたりの平均賃金額


労働日数ではなく、暦日数で割るところに注意が必要です。一般的には、平均賃金は実際の労働日数に対する賃金の平均よりも低い金額なります。暦日数には土日祝日など休日も含むからです。


なお、平均賃金について労働基準法の条文を確認したい場合は、労働基準法の第十二条をご参照ください。

リンク:e-Gov法令検索 労働基準法


③ 具体例:労災によって、100日間の休業が発生

→ 労災直前の3か月の賃金総額が90万円だった

※1月に30万円、2月に25万円、3月に35万円給与支払いを受けたと仮定

→ この間の暦日数は、合計すると90日 

※1月は31日、2月は28日、3月は31日の暦日数がある

→ 90万円 ÷ 90日 = 1万円(=1日あたりの平均賃金)

→ 1万円 × 0.8 = 8,000円(=給付基礎日額)

   

→ 8,000円 × 97日 = 776,000円(=保険給付される金額)

※100日間の休業ですが、最初の3日分は保険給付されないことから97日分の保険給付です。


こうしてみると、給与額に比べていくぶんか減額されるものの、それでも、しっかりと補償されるものだということが実感されるのではないかと思います。

 

3. 注意すべきポイント

最後に、手続方法やその他の注意事項について解説します。


① 手続方法について:請求書を労働基準監督署に提出

休業(補償)給付および休業特別支給金は、様式第8号(休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書)または様式第16号の6(休業給付支給請求書)に、会社や医療機関から証明をもらい、それを所轄の労働基準監督署長に提出して請求します。療養(補償)給付は労災病院や指定病院での手続きと、それ以外の病院での手続きと異なっていましたが、この点につき、休業(補償)給付では手続きとして労働基準監督署に提出する必要があるので注意が必要です。


なお、休業(補償)給付および休業特別支給金は、同一の様式で、同時に請求することができます。また、休業が長期にわたる場合は、1か月ごとの請求が一般的です。


② 賃金の変動幅が大きい場合の給付基礎日額について:変動率に応じて改定

給付基礎日額は、保険給付される金額に大きな影響をあたえます。そのため、賃金水準が四半期で変動した場合、その変動率に応じて増額又は減額されるので注意が必要です。また、療養開始後1年6か月を経過した場合は、年齢階層別の最低・最高限度額が適用されます(休業給付基礎日額)


③ 一部負担金について:通勤災害による療養給付を受ける場合

通勤災害により療養給付を受ける場合は、初回の休業給付から一部負担金として200円(日雇特例被保険者については100円)が控除されます。


④ 請求に関する時効について:2年経過で時効により請求権が消滅

休業(補償)給付は、負担した費用につき、労働基準監督署に請求しなければなりません。請求権発生の翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅します。そして、休業(補償)等給付は、療養のため労働することができないため賃金を受けない日ごとに請求権が発生します。休業明けからではないので、この点、とりわけ注意することが必要です。

 

以上が休業(補償)給付となります。給付の要件や保険給付される金額、手続方法等注意事項についてみてきました。簡単に下記にまとめます。


・ 労災により休業する場合、一定要件を満たせば、休業4日目から保険給付される

・ 給付基礎日額の80% × 休業日数分の金額が保険給付される

・ 所定の請求書を労基署に提出して保険給付を請求する。時効に注意すること


入院等によって休業すると、いない間の仕事はどうなるのか、その間給料はどうなるのか等、心配が先に立ってしまいます。しかし、労災保険で一定の補償を受けることができるので、まずは、治療に専念しましょう。職場のみなさんも、きっと、あなたが回復されてまた元気に一緒に仕事ができることを待っていますよ。


オープンリソース・アルケミストは、お客様の経営実態に合わせた提案を行っております。リスク管理や労災対策に関する疑問や改善案について、どうぞお気軽にお問い合わせください。


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