起業の段階や事業の受け継ぎの際、自社株を所有することは一般的ですが、多くの場合、経営に忙殺される中で自社株の評価を怠ることがあります。特に、非上場企業の場合、公開市場での価値評価が行われないため、自社株の価値に関する見落としが生じやすいのです。
しかし、自社株の真の価値を理解することは、あなたの事業や資産の中核に関わり、将来の成長や持続可能な成功に密接に結びついています。自社株価値の正確な評価は、経営戦略の立案、事業承継計画の策定、資産管理の最適化など、多くの側面で極めて重要です。自社株価値の変動にはさまざまな要因が影響しますが、これらを理解し、適切に評価することが不可欠です。
この記事では、非上場企業における自社株について焦点をあて、その価値の変動要因と評価の重要性について解説します。自社株を保有している経営者や事業家にとって、この知識は経営戦略の成功に向けた不可欠な要素です。
Guide Line
2:自社株価値の変動要因
1:自社株の評価方法:正確な価値を見極めるために
非上場株式における株価の評価方法は、以下の3つの方式があります。
1. 類似業種比準方式:
類似業種比準方式は、業界ごとに上場している標準的な会社と比較して非上場株価を算定する方式です。
2. 純資産額方式:
純資産方式は、純粋に会社の資産価値から株価を算定します。
3. 配当還元方式:
配当還元方式とは、株主の立場から株価を算定します。1年間の配当金額を一定の利率(10%)で還元して株式の価額を評価する方法です。
これらの3つの方法が用意されていますが、会社側が完全に自由に選択できるわけではありません。会社の支配割合や会社規模に応じて、適切な方法により評価する必要があります。
2:自社株価値の変動要因:市場と内部要因の影響
前項にて、非上場企業における自社株の評価方法について、いくつかの種類があることを説明しました。詳しい計算方法については省略していますが、方式名から推察できる通り、自社株式の評価は計算に用いる数値や市況によって変動するものとなります。以下、いくつかの変動要因を例示します。
・業績と収益性:
企業の業績や収益性は、株価に直接影響を与えます。収益の増加や利益率の向上は株価上昇の要因となり、逆に業績の悪化は株価下落につながります。
・業界動向:
企業の業界やセクターに関連する出来事やトレンドは、株価に影響を及ぼすことがあります。競合他社の動向や新興企業の登場などが含まれます。
・経済状況:
経済全体の状況や景気サイクルは、非公開企業の株価にも影響を与えます。景気が好調であるときは、多くの企業の業績が向上し、株価も上昇傾向にあります。
・企業規模の変動:
純資産額や従業員数など、自社の企業規模に変動がある場合、評価方式に影響を与えることがあります。
以上は例示となりますが、様々な要因が自社株の評価額に影響を与えるため、経営者は意識的に評価額を把握し、乖離していないことを確認しておく必要があります。
3. 自社株評価の重要性:経営戦略と事業継続性への影響
非上場企業においても、自社株を評価してその真価を把握しておくことは、以下の点において重要です。
・事業評価と経営戦略の指標:
自社株の評価は、企業の事業評価を示す指標の一つです。これは経営陣にとって、企業の健全性や市場での競争力を評価し、戦略的な方向性を決定するための重要な情報源となります。評価が高い場合、企業の価値と信頼性が高まり、新たな投資や成長戦略の実行がしやすくなります。
・資金調達と成長への影響:
自社株評価が高いと、資金調達が容易になります。銀行、投資家、パートナー企業など、資金を提供するステークホルダーは、高い評価を持つ企業に投資しやすくなります。このため、自社株評価が高いことは、新たなプロジェクトの資金調達や事業の成長に対する支援を受けるための鍵となります。
・事業承継とオーナーシップの変化:
自社株評価は、オーナーシップの変更や事業承継においても重要です。高い評価を持つ企業は、売却時にオーナーに対するリタイアメント資金を提供し、後継者や新しい経営陣に財務的な安定性を提供することができます。
・競争力と市場での位置:
自社株評価は競争環境での位置を示すものでもあります。競合他社と比較して高い評価を持つことは、市場での競争力を高め、取引や提携の交渉において優位性を持つことにつながります。
非上場企業においても、自社株評価は企業経営において大きな影響を持つ要素であり、戦略的に管理されるべきです。企業は自社株評価の向上に取り組むことで、持続可能な成長、資金調達の容易化、ステークホルダーの信頼の維持、事業の承継など、多くの利点を享受できるでしょう。
非上場企業における自社株の評価について解説しました。自社株評価は、本業に忙殺されて後回しにされがちですが、経営戦略の立案、事業承継計画の策定、資産管理の最適化など、多くの側面で極めて重要です。また、自社株評価を適切に行っていない場合、事業承継の際にリスクが生じます。この点については、別記事にて解説します。
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